辻 仁成さん インタビュー

オルセー美術館にほど近い
パリの中心地で、
長年創作活動を続けておられる
辻 仁成さんに
お話をうかがいました。

−本展をご覧になっていかがでしたか?

ルノワールの初期から晩年に至る作品を日本でこれだけ網羅して見ることができるというのはすごいことですね。今回、久しぶりに日本で大規模展覧会を拝見したのですが、昔に比べて作品との距離が近くなっているのが良いな、と思いました。壁の色もオルセー美術館に近いので、日本にいながらにしてパリの美術館の雰囲気を楽しめますね。

−ルノワールではどの作品がお好きですか?

僕は少しひねくれたところがあるので(笑)、一般的に有名な肖像画よりは風景画に惹かれます。本展では「風景画家の手技(メチエ)」という章で、風景画もたくさん展示されているのが嬉しいですね。
とは言っても《ジュリー・マネ》あるいは《猫を抱く子ども》も好きですけど。ジュリー・マネの表情がなんとも言えずミステリアスで素敵です。
《草原の坂道》
1875年頃 油彩/カンヴァス 60 × 74 cm
オルセー美術館
© Musée d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF
《ジュリー・マネ》あるいは《猫を抱く子ども》
1887年 油彩/カンヴァス 65.5 × 53.5 cm
オルセー美術館
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

−風景画も光にあふれていて、なんとなく優しい気持ちになりますね。

そうなんです。特に現在、世界はテロや災害などで不安定な状況ですけど、ルノワール作品に描かれている光を見ていると自然と穏やかな気持ちになっていくんですよね。

ルノワールが生きた時代も普仏戦争、パリコミューンや第一次世界大戦などがあって決して平和な時代ではなかったのですが、ルノワールはそんな時代において明るい光を描き続けましたよね。それらの作品は今でも見る人を励ましてくれるような気がします。

辻 仁成さん プロフィール

つじ ひとなり(作家)
東京都生まれ。 1989年『ピアニシモ』ですばる文学賞を受賞。1997年『海峡の光』で芥川賞、1999年『白仏』のフランス語翻訳版「Le Bouddha blanc」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を日本人として初めて受賞。著作はフランス、ドイツ、スペイン、イタリア、韓国、中国をはじめ各国で翻訳されている。著書に『太陽待ち』『サヨナライツカ』『右岸』『永遠者』『クロエとエンゾー』『日付変更線』など多数。近著に『息子に贈ることば』『パリのムスコめし』、監督作品として映画『TOKYO DECIBELS』(ファニーパンドラ)がある。
ミュージシャン、映画監督、演出家としても活躍。パリ在住。

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